2017-10-31

「川柳スパイラル」創刊




「川柳スパイラル」が創刊されました。

といっても、まだ雑誌を手にとっていないんですよね。川柳スープレックスその他でお世話になっている飯島・川合・柳本の三氏、書評を書かせてもらったことのある小池・兵頭の二氏、そして相棒の入交佐妃が関わる雑誌なので、読むのを楽しみにしているんですけど。

「川柳スパイラル」創刊号目次

1  巻頭写真 入交佐妃
3  創刊のご挨拶・渦の生成 小池正博
6  同人作品 Spiral Wave
18  おしまい日記 第一回 柳本々々×安福望
23  いかに句を作るか 第一話 川合大祐
27  現代川柳入門以前 小池正博
31  小遊星 飯島章友×小津夜景
35  会員作品 Plastic Wave
41  現代川柳あれこれ Biotope 小池正博
47  投句規定・合評句会案内
48  妄読ノススメ 兵頭全郎
50  第一回東京句会
52  編集後記

実はこの創刊号、小津のインタビューも掲載されています(ありがとうございます)。対話という形式をつかった〈作品〉ではなく、ふつうに生の声(ってなんだ? 本当にそんな声が可能なのか? とは聞かないでくださいね。てへ。)でお喋りした記事です。興味のある方は編集発行人の小池正博氏までお問い合わせください。

2017-10-22

第3回瀬戸内ブッククルーズ、そして昼寝。



今週の金曜日と土曜日に「第3回瀬戸内ブッククルーズ イチョウ並木の本まつり」が開催されます。本と遊んで、聞いて、飲んで食べて、うんぬんといったテーマで、瀬戸内エリアを中心にした本に関わる48店舗が集まるイベントです。HAHUBrisées石原ユキオさんがソロで出店されるもよう。これ、春にもあったイベントですが、とても明るく愉しい雰囲気の写真がいっぱいでした。

日時 2017年10月27日(金)・28日(土)/10:00-16:30頃まで
会場 Jテラスカフェ(岡山大学 津島キャンパス内)
住所 〒700-0082 岡山県岡山市北区津島中1丁目1-1
電話 086-253-0567(Jテラスカフェ)
入場 無料
備考 雨天決行(ただし当日午前7時の時点で警報発令等の荒天の場合は中止とし、ウェブサイト、SNS上でお知らせいたします。)
主催 瀬戸内ブッククルーズ実行委員会

2017-10-21

宇宙間について・後編



句集『途中』の制御しがたい遠近&重量感覚は、身体を詠んだ句にも及んでいる。

澄む水に浮かんだままの主人公  松井真吾
吊革のなくて摑んだ夏の山  〃
生命線背中まで伸び秋終わる 〃

一句目は「主人公」が「浮かんだまま」というのが絶妙におぼつかない。二句目は摑んだものが大きすぎる。三句目は命の目盛りが伸びすぎだ。

で、措辞のリズムや、脱超越的な身体描写などが、やっぱり現代川柳っぽい。

そういえば自分は、現代川柳で割とよくある〈脱超越的身体〉を俳句に導入できないかしらと思い、仮に俳句における身体把握が人文学的だとするならば川柳のそれは工学的であり、ロマン主義に陥らずに身体を脱臼させる〈狂度〉が技法として行き渡っているといったメモや、普川素床さんの川柳における身体的〈狂度〉をめぐる放談や、福田若之さんの俳句を前田一石さんの川柳と比較して俳句的身体の非脱臼的傾向を述べた日記(これ、なぜか枕が関心を集めるようですが本題は中盤以降です)などを書いたことがあるのだけれど、松井さんの句集を読むと、川柳と俳句とを行き来するのはそう難しくないのかも、とちょっと胸がはずむ。

ところで松井さん、普川素床さんとは句会仲間らしい。普川さんと句会をするってどんな感じなのだろう? そこも宇宙間的文脈で大いに気になるところだ。

できたての虹からあふれだす達磨  松井真吾

参考リンク
【みみず・ぶっくす42】川柳とその狂度
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第1回 また終わるために-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第2回 ねえジョウ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第3回 いざ最悪の方へ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第4回 まだもぞもぞ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第5回 しあわせな日々-
〈世界〉の手前から フラワーズ・カンフー * 小津夜景日記

2017-10-20

宇宙間について・中編



きのうの「松井真吾さんの句から現代川柳を連想した」件。これは多分に感覚的な話(それゆえ言語化するのが億劫)なので詳細は省くけれど、たとえばこんな波長のもの。

初夢のあいだあいだのコマーシャル  松井真吾
涅槃図のトムはジェリーを追いかける  〃
秋の蚊の想定外のテレパシー    〃

一句目は「初夢」から入って「コマーシャル」に着地するという発想が素敵。「あいだあいだ」という繋ぎ方も、全体の音の張りもいい感じ。

二句目は季語がぴったり。トムとジェリーの図像を涅槃図に落とし込むといったアイデアは、現代アートにもなりそう。

三句目は「想定外の」がキモ。句が躍ってる。こういった、一歩間違うと説明オチになりかねない微妙な表現を、巧みに使いこなすことで生じる愉しさ。

あ、あとこの句集、異様な速度を詠んだ句が多すぎるところもヘン。

ひとり居の父雛壇を駆け登る  松井真吾
雨乞いの校長廊下を駆けてゆく  〃
お客様転落のため夏終わる    〃

こうした風景もまた、松井さんよる世界認識の、制御しがたい遠近&重量感覚から来ているのだろう。

2017-10-19

宇宙間について・前編





柳本々々さんが松井真吾さんの俳句を〈収拾のつかない空間〉と評している(続フシギな短詩164)が、これって松井さんその人の生きている場所をそのまま言い当てている、と思う。なぜそう思うかというと、少し前に松井さんとメールで話していたとき、スピカにわたしの書いた「国宝さん&重文さん」のエピソードに松井さんが触れて、

「よくわかります。わたしはビルやマンションにある『定礎』をずっとひとの名前だと思ってました。『あ、また定礎さんのビルだ!』と。」

とおっしゃったからだ(※この話、松井さんの了承を得て書いてます)。

だいたい松井さんは、話すたびに現実離れしたことを言う方だ。たとえば野球実況の「右中間に打った~!」というのを「宇宙間にボールが飛んでいったのだ」とずっと思っていて、今でもそう考える方がしっくりくるのだ、とか。そんなわけで、彼の句集『途中』にも、奇想天外な句がちらほら。

白魚を載せて気球の飛び立てり  松井真吾

極小としての「白魚」と極大(≒膨張物)としての気球。しかもそれが浮遊する。この取り合わせには作者の、制御しがたい遠近&重量感覚が現れている。あるいは、

いっせいに椅子の引かれる蜃気楼  松井真吾

「いっせいに」といった強力な一致団結が、しがない空中の「蜃気楼」として、どっと出現する光景。これも「宇宙間」的境涯の一景かも。

こういう系統の作品には、良い意味でのすっとぼけや、あるいは知的カマトトな感じの、いわゆる作者の才気が見え隠れするものが多い。ところが『途中』はそういった雰囲気とは無縁で、あくまで素直な手触りがある。そこが新鮮で、読んでいて疲れない。あと思ったのが、全体的にとても現代川柳的だということ。ここ、わたしにとって大変気になる特色です。

2017-10-12

千夜一夜文庫




あの、聞いてください。きのう本屋さんで、千夜一夜文庫を5冊買おうとしたんです。合計で13€。で、代金を払おうとすると、レジの女性が「ポイントカードが10€貯まっているから値引きしておくね」と言って、なんと3€しか使わず。さらにその上、いまちょうど千夜一夜文庫を2冊買うと文庫型手帖を1冊プレゼントするキャンペーン中だったらしく、2冊も手帖を貰ってしまいました。これってもう、タダで5冊手に入れたのと同じですよね。にゃーん。

2017-10-03

詩的な生活を反映したワインの香り




長崎のひとやすみ書店から「新聞のインタビュー記事、活用しています」と写真をいただく。ありがとうございます。

ひとやすみ書店の前には、巨大な本の形をした看板が立っている。ご主人はその看板に、日替わりでオススメ本を立てかけ、またその本から引いた一節をチョークで板書する。レストランみたいだ。(この板書にまつわるご主人のプチ・エッセイが、こちらに掲載されています。)



最近、白居易についての論文を読んでいるのだけれど、中国語なのでわからないことがいっぱいある。

とりあえず、ざっと判断できればよい事柄についてはグーグル翻訳にかけてみる。すると例えば「心の幽霊で彼の飛翔を表現。それは韻。ザ・彼の取材は、詩的な生活を反映したワインの香りで満たされています。」といった感じの大変わかりやすい奇文と遭遇でき、白居易に対するイメージが逆しまにしっかりしてくる(ような気がする)。

他に参考になった奇文は、

「酔った郷のトークは、問題だが、音楽もまた瞬間だ。」
「酔った喜びは、酔って一緒に飛んで飛んで、翼の生えたアンディは、"音楽の宵の断食の時代の世代の詩歌"と、言った。」

酩酊、音楽、飛翔。これが白居易のキーワードとなる(らしい)。

2017-10-01

スピカ終了。





スピカの9月月間日記「かたちと暮らす」終了。原稿の締め切りはかなり前のことだったので、今あらためて言うのは妙な感じなのですが、とても楽しかったです。

そういえば、スピカにエログロのことを書いた日があったのですが、このストックホルム近代美術館は、水墨画コレクションが充実していました。

東洋美術の展示室に入ると、壁一面にスライド式の大きな展示ガラスが本の背表紙みたいに埋まっていて、それを自分で勝手に引き出して眺める風になっているんですよ。LPのジャケットをぱたぱたチェックするみたいに作品を漁ってゆけるのでとても便利。売店に八大山人の絵葉書がいっぱいあったのも、良かった。